布留川 勝の「人材育成の現場!」日記
企業・団体の「グローバル&自立型人材」育成に携わるグローバル・エデュケーションの代表、布留川が人材育成の現場で日々感じたことなどをまとめます。 BLOG内検索
GlobalEducationandTrainingConsultants代表取締役布留川 勝カーネギーメロン大学 Institute for Software Research International Program Director

2017年07月

相手の誤解を最小限に抑え、予想外の反応に対応するコミュニケーション力を強化するには?

2017年07月26日
第二部では、当社パートナー講師であるファリザ講師が登壇した。「日本人が海外でも成功するための異文化協働のカギ」を理解いただくために、たくさんのロールプレイを体験いただいた。

ファリザ講師が作ったロールプレイは、海外赴任経験のある日本人マネージャー200人、及び、日本人と何らかの協働経験がある外国人ビジネスパーソン500人の計700人にインタビュー調査をし、その結果から得た失敗事例や成功事例を基に作られている。そのため、とてもリアルな内容である。

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例えば今回実施したケースの中で、「品質問題発生時の対応」というものがあった。
ある東アジアにあるベンダーに試験的にプログラミング工程を発注したが、一部の工程で発生する手戻り割合が許容水準を超えており、調査・報告を頼んだにも関わらず返ってきた報告書は明確な原因追及が行われていない。このケースに対して、東アジアベンダーの「品質」に対しての考え方をまとめることと、再検討の依頼をするのであれば、どのようにするか?という内容をご参加いただいた人事部の皆さまに考えていただいた。

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このケースに関して、ファリザ講師は、2つのポイントで解説されていた。

1.期限や価格内に収めるという考え方の違い
今まで色々な海外のベンダー特に今回のケースのように東アジアのビジネスパーソンにもファリザ講師は何人にもインタビューした経験があるが、その時返ってきた返答で多かったのは、「私たち(東アジアのベンダー)も、見積もりの金額も期限も、それ以内に終わらないことは初めから実はわかっている。ただ、せっかく日本企業からこんな話がきたので、「ノー」とは絶対に言えない。そんなことをするとすぐに他のベンダーに取られてしまう。そのため受けるしかない。ただ、日本企業は求めてくるクオリティーは高すぎる。別途、それに対して対価があるならまだしも納期は短く、価格も抑えて、そこにクオリティーについて細かくいつも言われるため本当に大変である。実際のところ金額も期限も当初の提示内に終わらなかったとしても、その都度日本側とのミーティングで交渉をしながら微調整していこうというマインドでいつもやっている。」
日本では、クオリティーの重要さは当然前提条件にあり、そこに納期を守ること、価格も提示内でおさめることは「当たり前である」思っていることが多い。ただ、ここではその「当たり前」は通用しない。異文化理解で重要なのは、相手の「通常」は一体何なのか?早い段階で理解することだ。

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2.はっきりと契約書に必要項目を記載する重要さ
今回のケースの場合、ベンダーの提出してきた報告書は正直全く明確な原因が書かれていなかった。
それはなぜか?そこに彼らは、報告書を提出する「価値」を見出さなかったからである。
「別料金が発生するなら報告書を作成するが、既にこんなにも忙しく納期も迫っている中で、なぜやらないといけないのか?」というのが、彼らの考え方である。
もし今回のように別途報告書作成が必要であれば、その旨は先に契約書に記載しておく必要がある。そして、報告書作成料は1ついくらであり、どのくらいの量と質を求めているかも明確に記載する必要がある。そうしないと、実際2行〜3行で送ってくるというケースもあるという。
または、実際にこのように書いてほしいという報告書のフォーマットを先に渡し、サンプルも書いて「これが私たちが求めている完成版である」として送っておくと相手側もイメージがつきやすい。そして、細かな項目の記載が必要である場合は、「こういう理由があるため、この項目に対する詳細説明が必要である」と、相手の一歩先を行き、記載しておくことで余分なミスコミュニケーションも防げる。
また、プロジェクトをスムーズに進めるためには相手のモチベーションを上げることも重要だ。常にbig pictureを見せ、「このようにフォーマットを使って今後も報告をしてくれると非常に分かりやすくこちらも一緒に仕事がしやすいため、将来的に他のプロジェクトも頼む可能性がある」ということをいつもちらつかせ、こちらも上手く相手を動かしていくことが大切である。

異文化間で仕事をすることは、もちろん容易ではない。ただ、ファリザ講師のような実践的なロールプレイを通して、事前に相手の誤解を最小限に抑え、予想外の反応に対応するコミュニケーション力を強化する異文化対応力は鍛えることは出来る。

異文化のフレームワークを学ぶことも重要であるが、具体的な事例をもとにロールプレイのワークショップのミニ体験は納得感が高く高評価を頂いた。

kazukon at 16:37

「自分には絶対英語は話せない!」というリミッティング・ビリーフを壊す異文化研修とは?

2017年07月24日
7月4日(火)に大阪にて「再考!従来異文化研修 多文化の中で成果を上げる交渉術とは?」を開催した。私のパートでは、まず初めに参加いただいた皆様と現在導入されている異文化研修の課題点についてディスカッションし、その後、異文化対応力強化のための「フィリピンでのプロジェクト遂行型プログラム」についてご紹介した。

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「フィリピンでのプロジェクト遂行型プログラム」の一番の目的は、『学生時代に英語の点数がいつも低かった、英語が苦手だったなど、心理的トラウマや失敗から「自分には絶対英語は話せない!グローバル人材になれるはずない!」と制限しているリミッティング・ビリーフ(制限を作り出す思い込み)を壊す』ということだ。

対象者は、今後、市場としてアジアを捉えており、英語が苦手で海外渡航経験の少ないエンジニア等が多く、中にはパスポートすら持っていない受講者もいる。TOEICのスコアも平均で400点台など、フィリピンやアジア圏の出張をいつも怖がっているような受講者がターゲットである。

参加者人数は14名の日本人にプラスし、4名現地フィリピン人が各チームに入り、フィールド調査や分析を行う。そして、1週間後の最終日に提案プレゼンを実施するというスケジュールだ。

では、研修を通してどのような変化があるか?
下記は、実際に参加された受講者からのコメントである。

1)英語に対する苦手意識が払しょくされる
)萋10件以上のアポイントメントの電話をかけ、英語を話すことの苦手意識がなくなった。
100人以上のフィリピン人に対して街頭でアンケートを実施したことで、人見知りが改善され、英語で話してもパニックにならなくなった。

2) グローバルでやっていくという自信とマインドの変化
 ̄儻譴之3件のアポイントメント承諾を取れたことは、グローバル人材としての大きな自信につながった。
▲廛蹈献Дトを通して、ネガティブに考えたり受け身な姿勢が改善された。

3)異文化間コミュニケーションの理解が深まる
.侫リピンの文化も日本の文化も違いはあるものの、優劣はないことに気付いた。また、フィリピンの文化が好きになった。
▲侫リピン人とプロジェクトを通じで最後は友人になり、初めて海外の友達が出来た。今でもメールでやり取りをしている。

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では、なぜこの研修からそのような変化が起きるのか?それには、大きく4つの学びがあるからである。

1)非常に優秀なフィリピン人からの学び
→同じチームであったフィリピン人メンバーは、自分たちより給料は低いにも関わらず、ビジネススキルは遥かに高く、英語も流暢であることに気づく。

2)自分自身の偏見への気づき
→海外に行ったことがなかった自分の今までの偏見に気付く。
例:ASEANの人は、仕事が出来ないだろう。日本人と違って、怠け癖があるのではないか? 等

3)フィリピンという国への将来性
→人口ピラミッドが日本と真逆であり、若者が多く、元気で明るく活気に溢れている。ホスピタリティーが高く、開放的な文化に好印象を持つ。
  
4)このような人材と一緒に働いていくイメージが湧く
→一緒にプロジェクトを行ったことで今後自分が何を強化し、どのように世界と戦っていく必要があるか明確になる。

今後、求められる異文化理解研修は、従来型の氷山モデル、低・高コンテクスト、ソクラテス式と孔子式などの内容ではなく、このプロジェクト遂行型プログラムのようにフィールドワークやケーススタディー、ロールプレイを通じての「実践してみる」スタイルへとより変化していくだろう。

後半のファリザ講師のパートについては、次回ブログでご報告させていただきたい。
kazukon at 17:23

G研報告(146回) 「人材をいきなり送り込んでいませんか? 」(前編)

2017年07月09日
4月26日(水)、「人材をいきなり送り込んでいませんか?」と題してグローバル人材育成研究会を開催した。

前半は私より「グローバル人材がプールできる企業、できない企業」をテーマにご参加者とのディスカッションを行った。

なぜ、グローバル人材が育成できないのか?
グローバル人材がプールできない企業の特徴としては、以下の7点が挙げられる。

1.「要は英語でしょ?」から始まる失敗
→ 「まるドメ人材」+「 英語力(TOEIC600)」=グローバル人材?
  「日本語での経営塾」+「英会話レッスン」=グローバル人材?
2.グローバル人材の定義が曖昧
→英語力以外にどんな能力が必要か定義されていない。
3.他社事例を必要以上に気にする
→他社とは、グローバルのフェーズや課題・状況などが同じではないため、参考になるとは限らない。
某社ご担当者は「他社事例ばっかり集まってしまって3年が経った。なんとかしないと。。」
4. グローバル人材育成が体系だっていない
→選抜から底上げまでがシームレスになっていない、さらに良くないことに数年で方針が変わってしまう。
5. 海外拠点の人材には力を入れていない
→現地スタッフの育成については何も手をつけられていない。国内の方向性が固まっていないので海外は全く二の次である。
6. 若手ばかりに研修を実施している
 →会社のコアとなる部課長層にはグローバル研修を実施していない。最近は減少傾向にあるが、若手だけのグローバル人材育成はバランスが悪い。若手からも「上司にグローバル人材がいない。ロールモデルが欲しい」という意見も多い。
7. 底上げと選抜の予算配分のバランスが悪い
 →英会話レッスンは予算配分が高くなってしまうため、本当に投資すべき人材に投資ができなくなってしまう。英会話レッスンや通信教育は前年から継続で進めやすいが、最重要投資が必要な国内で活躍している魅力的なリーダー人材のグローバル人材化の予算を奪ってしまう。もう一度優先順位をつけてゼロベースで考えてみてはどうだろうか?

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上記の特徴をお話した後、「御社でグローバル人材をプールするにあたっての課題は何か?」というテーマでディスカッションをした。今回も大手企業のご担当者に参加いただいたが、以下のように様々な課題が出た。

同じ人ばかりに白羽の矢が立つため、人材プールが増えない。
グローバル人事以外は、グローバル人材育成を対岸の火事だと思っている。
・人材を送り込んで、その人が日本へ戻ってきたときにどのような仕事を与えるか、ドメスティックな仕事を与えて辞めてしまわないか?海外へ送り込む人のキャリアパスをどう考えるかが課題。
グローバルで統一のコンピテンシーを作り、同じゴールに向かっていくのが中々難しい。
・まさに、前述の7つの特徴のような課題がある。


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どうしたら、グローバル人材プールができるか?
まずは、「グローバル人材=英語レッスン」、「グローバル人材=日本語での経営塾+英語レッスン」という発想を何とかすべきである。国内の優秀な人材を選抜し半年〜1年かけて「英語でのセッション」を実施し、ネットでの無料教材や低価格の電話レッスン等で「英語の自己学習の習慣化」を促すことだ。 「当社の国内リーダー人材は日本で大活躍していて英語ができない。しかし、彼らにもグローバルで活躍してもらわないと人材が間に合わない。そこで妥協案として出てくるのが日本語の経営塾+英会話レッスン。しかしこれはほとんど無駄な投資になる。欧米もアジアもグローバル企業においては、リーダー育成は英語で行われている。英語でケーススタディを行い、ディベートしディスカッションを行う。日本語で同じことを行い、英会話レッスンをつけたとしても1 +1にはならないのである。

日本語での経営塾を英語でのセッションに変えることで、最初は聞き取れなくても、次第に理解し、最終的に自分の意見を英語で発言することができるようになる。もちろんその期間中は1日数時間の英語の自己学習を受けていただくことになる。効果的な英語学習を行うことによって必ず必要最低限の英語力を身につけることができる。
DSC_0034そして、こうしたトレーニングを通して、L型*1のトップ層20%をGL型*2にすることから始めるのはどうだろうか?トップ層の方たちは、本気になれば、8カ月間の英語のセッションもやり切ることができる。最終プレゼンでも、「よくここまで来たな!」と、私自身感動するほどのプレゼンテーションをするまでに成長している。 

*1 Local型人材:国内で活躍している人材
*2 Global&Local型:国内外問わず、また国籍・価値観・専門性・ジェンダーなどの異なるステークホルダーとの協働において、最高のパフォーマンスを常に発揮できる人材

DSC_0035さらにグローバル人材プールができている企業では、5年間かけて国内のコア人材をGL型にするプログラムを続けて、100名のグローバル人材を作りさらにその中の上位20%をハーバードやスタンフォードなどトップ10ビジネススクールのエグゼクティブエデュケーションに派遣するなどしてグローバル人材育成を体系化している。

グローバル人材プールを作るには、2:6:2の法則の上位20%に集中的に投資をし、トップ級の講師によるトレーニングを行い、そして、残りの80%の方たちには、従来の英会話レッスンではない方法(低価格の電話レッスン等)で自己学習を促進させ、互いに学びあう英語学習カルチャーを作っていくことで底上げをする。つまり、英会話レッスンという機会創出にコストをかけるのではなく、英語を学ぶ動機付けや、学習法にコストをかけ、自発的英語学習を社内デファクトにするという発想に転換することで、組織全体を変えていく必要があるのだ。

(後編へ続く)
kazukon at 14:11
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